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4月12日まで品川のキヤノンギャラリーで朝日新聞出版写真部の写真展がありました。
古くはアサヒグラフ、最近ではアエラなどに掲載された写真を展示していました。自然や都市の風景写真、そして有名人のポートレートがとても素晴らしかった。
もう会期が終わってしまったの見に行けないのが残念ですが、職場が近いこともあり、何度も行きました。
何度も見ているうちにちょっとした違和感を感じ、その原因が肖像権や有名人のプライバシーに起因しているのではないかと思い、ブログに考察することにしました。

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この写真展で驚いたことが二つあります。

一つはカラー写真の美しさです。私の生まれたころ、50年も前のカラー写真に写った有名人の立体感、精細感、今のデジタルはさらに精度の高い画像を得ることができますが、それはあくまで技術論であって50年前のカラーフィルムの描画力で見る人を感嘆させるに十分な精細感があるのです。おそらく当時の報道機関のフィルム撮影技術・現像技術は世界の最高峰にあったのではないでしょうか。

もう一つがこの記事の本論なのですが、この写真展には50年ほど前からのスター、文化人、そして最近のスターのポートレートが展示されているのですが、明らかに過去のスターや文化人の写真のほうがおもしろいのです。

最初は過去のはフィルムで、最近のはデジタルだから、よくあるフィルム .vs. デジタル論の範疇なのかな?と思いました。

過去のスター、文化人としては

渥美清、夏目雅子、高倉健、岡本太郎、小澤征爾、菅原文太、手塚治虫、クレージーキャッツ、黒柳徹子、倍賞美津子、伊丹十三、川端康成、司馬遼太郎、寺山修二、開高健、大江健三郎、水上勉、吉行淳之介、野坂昭如

最近のデジタル作品としては

妻夫木聡、松たか子、木村拓哉、五郎丸歩

がモデルとなっているのですが、明らかに後者の最近の有名人の写真のほうが印象が薄い。

2度目に見に行ったとき、その原因がわかりました。

アイキャッチに使われている渥美清の写真、リラックスした感じで、「ちょっとこっちで話をしようよ」とまるで生きていて話しかけてくるようです。
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岡本太郎、菅原文太、川端康成の眼光は鋭くて紙背からこちらを射るようでした。

大江健三郎はまだ幼児の長男を自転車の前に乗せて走っている満ち足りた顔、水上勉は帰省し母親と一緒に散歩している写真でした。若かりし頃の倍賞美津子は父親と居酒屋のカウンターでさしつさされつです。人気女優は父親とどんな話をしたのでしょうか?

伊丹十三は自宅のお風呂場でしょうか?昔よくあった小さな木でできた風呂桶に入り、風呂の蓋に灰皿と電話をおき、煙草を吸いながら楽し気に電話しているのです。演技でなく日ごろからそうやっているんだろうな、という雰囲気です。開高健は鉄兜をかぶってジャングルの中で座り込み呆然としています。ベトナム戦争取材で何かを見てしまった後なのかもしれません。

過去のスターたちは印画紙にこのような多種多様な姿を残してるのですが、最近のスターたちの写真はすべてピンで、スタジオでポーズをとっているだけなのです。五郎丸選手だけが唯一、競技場でスーツ姿で写っています。

それらの写真には有名人の生活の匂いもプライバシーも感じません。端正な人型が高精細なデジタル撮影で影もライティングで消された状態で写っているだけです。生命感がなくてまるでアニメのセル画のよう。正直言ってまったく面白くない。

でも、つまらないのは被写体のせいでも、カメラマンのせいでもなく時代の要請なんだと思いました。

ネットが地球上に広がる前であれば、写真は日本だけで販売されている雑誌数十万部に掲載されるだけでしょう。読者は限定されているし、古い雑誌は廃棄され時とともに過去の写真は忘れ去られていきます。

ところがネット時代となった今、写真が一度でもスキャンされネットに掲載されたらそれこそ世界中からアクセス可能です。そして、一度アップロードされてしまえば、コピーが一つでもネット残っている限り、検索エンジンから数十年も、もしかしたら永遠にアクセスされ続けるのです。怖くてプライバシーが写っている写真を公開するなんてできません。

ネット時代になって情報にアクセスすることは簡単になったといわれますが、実はそれは幻想で本当に必要な、本当に見たいと思う情報にアクセスすることは難しい時代になったのかもしれません。

 

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2 thoughts on “写真展 「THE TIMES PEOPLE SHARED 朝日新聞出版写真部の70年」とプライバシー

  1. なるほど。色々考えさせられます。
    しかし報道写真まで変わって来てしまったとは。
    世代が変わりカメラマンの意識も変わってしまった、というだけではなく、ネットのおかけで撮りづらい世の中になってしまったという観点は、目から鱗です。
    いくら被写体との距離を縮めても、様々なしがらみが出てくるなんて、世知辛い世の中ですね。

    1. そうなんですね。撮るのはカメラマンの本能なので、私の場合はとりあえずなんでも撮ります。んで発表するかしないか、どこで発表するかしないかを後で考えるようにします。そういった意味ではブログに載せている写真って結構抑えてます(涙)

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