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日曜日にフォトギャラリー・ルーニィの「額装・展示」講座を受けたインプレッションを記事にしました。

受講した理由の一つにギャラリーの写真額を触ってみたいという、とってもニッチな興味があったからなんです。

少し前置きが長くなりますが...

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年初に「やるぞ写真展」計画を立ち上げたわけなのですが、最初は軽く考えてました。
駅のまわりに安くスペース貸してくれるカフェがいくつかあるので、そういうところを
1週間5,6千円で借りて、量販店で500円プリントと500円くらいの写真額で、一点当たり1,000円でOKかなぁ、などと....

展示方法を考えるために写真ギャラリーやカフェをまわるうちに考え方が変わってきました。
展示する写真が良いか悪いかということが見てもらうための最も重要なファクターなのでしょうけど、どんなにいい写真でも展示が悪いと、見てもらえない...

極端な話、いい展示がされている写真展だと、写真の意味がよくわからなくても、ギャラリーから出た後に満足感をおぼえます。
うーん、言葉にするのは難しいのですが、写真ときっちり対面したさわやかさというか、今では英米人にも通じるという”おもてなし”された感覚なのかもしれません。

ところが展示が今一つで、写真が波打ちピカピカ光ったりしていると、写真の画像を見る前に、もう気が散ってしまい、ちゃんと見ることができなくなります。

自分の行動を省みると、無意識のうちに

1.ライティング
2.写真のまわりのスペース
3.額と壁が平行かどうか
4.額が水平かどうか
5.額そのものデザイン、見え幅
6.マット
7.写真の平滑感
8.ここでやっと写真に写っている画像

と意識を移していくことに気づきました。
1~7の過程で気が散ってしまうと、もう写真そのものまでたどりつきません。

このうち、1,2は借りる場所に依存してしまい、自分ではどうにもならない部分です。
ところが、3以降は自分の知識と努力でコントロールできる範囲だし、完成度はいい額を使うことで高まるのではないかと思いました。

それで、量販店の広大な額売場や、画材店の額をたくさん見て回ったのですが、高価なものから低価格なものまで、どれも同じような作りで、写真展で使えそうなものは皆無でした。

実際に写真展で使われる額はどんなものなんだろう?と興味津々で受講しました。

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実際に写真展用額を触ってみて、一般の写真額との違いに驚いてしまいました。どれも細かい部分なのですが、この2種類の額は似て非なるものでした。

■ 正面から見たフレームの形状
写真展用額のフレームの見え幅は数ミリで非常に幅が狭く、マットとの高低差が少なくなるように作られています。これはフレームの存在感を消すことで写真を引き立てる工夫だと思います。

一般写真額はフレームの見え幅は1cm以上あり、マットとの高低差もかなりあります。
フレームは写真展用額に比べるとかなり存在感があります。
これは家庭内で飾られることを前提としており、額には写真と家具をなじませる役割があるためだと思われます。

■ マット
写真展用額にはマットは付随しておらず、作家が自分の写真イメージにあわせてカットすることを前提にしています。
通常の写真展では一般写真額より、マットをかなり広くとっています。
逆に言うと、額・マットに比べて写真が小さいのです。
これはマットを広くとることで、写真への視線誘導を強化し、落ち着いた印象を与えるためだと思われます。
写真をおさえる面積が広くなりますから、たわみを防ぎ、高い平滑感を出すことができます。
また、先日の記事どおり、ブックマットを利用することで写真の保存性を確保しています。

一般写真額はたいてい既製品マットが付属しており、しかもマットの幅が
狭くなっています。
これはDPEのサービスプリント、インクジェット出力(特にフチなし)など余白がほとんどないプリントの額装を前提としているため、幅広マットにする意味がないせいだと考えられます。
マットの幅がせまくプリントとの重なり面積が少ないため、たわみを防ぎ、平滑感をだすというマットの役割を果たすのは難しそうです。

■ フレームの幅
写真展用額の方が一般写真額の1.5倍から2倍の幅があります。
これは幅広にして、剛性を高め、たわみを減らし平滑感を維持するためだと思います。また、ブックマット前提であるため、少なくともマット一枚分は一般写真額より厚くなっています。
一般写真額は、オーバーマットと背板に写真がサンドウィッチされますが、写真展用額は、ブックマットですでに写真がサンドウィッチされているために写真が背板と接触しません。背板に含まれているかもしれない酸性の溶剤と触れないため、保存性が高いといえます。

■ 背面から見たフレームの形状
両方とも吊紐をつけるためのフックがついています。
写真展用額はフレームに溝が彫ってあり、釘打ちによる展示が可能と
なっています。吊紐をどんなにピンと張ったとしても、どうしても額はお辞儀をしてしまいます。
写真展用額は釘打ちにより、壁と平行に写真を見せることができます。

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上の記述を読むと、なんだか写真展用額の方が高級そうに思えてきますが、
そうではありません。
家庭で写真を飾ることを考えると、ボクらは座って生活していますから、壁の写真はお辞儀をしていたほうが見やすいですし、部屋にいる間はずっと写真が視界にはいっています。なので、わざわざ高い写真展用額を買って写真の平滑感を維持する必要はないわけです。
あくまでTPOです。

「写真を飾る」ということはとってもシンプルなことに思えますが、細かいところを一つ一つ考えていくと、写真を見てもらうために、先人がいかに努力したかということがわかります。

講座ではケガキのしかたや、マットカッターを触ったりしました。
それも面白かったのですが、写真を見てもらうための先人の知恵や文化を見たような気がして、それがとても興味深かったのでした。

PS.ルーニィの「私の青空展」ですが、今日は仕事でいけませんでした(涙)。
早く自分の作品がどう展示されているのか見てみたいです

*旧ブログより転載。2009年4月22日 初出
6年前フォトギャラリーで使っているニールセンのフレームにいたく感動してしまい、記事にしたものです。今考えれば展示者の意図にあっていれば何を使ってもいいのですが、当時の私としては写真展はニールセンのフレームを使うものだと思い込んでいたみたいです。

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