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私は松本清張とか吉村昭とか昭和の作家が大好きです。

というのも、現代の作家と比べて、「ええっつ!?」と知らないことがわかるのが多い点と、描写と筋が緻密なので、一度読んだら忘れられません。

現代の作品はスラスラ読めるのですが、何か薄い感じがして、内容をすぐに忘れてしまいます。
映画やドラマを見てから原作にあたることが多いのですが、たいてい、映画やドラマのほうが原作より面白いのです。
原作で足らない部分が多いため、映画監督や脚本家の活躍できる余地が多いせいだと思っています。

というわけで吉村昭の作品レビューです。
今回ご紹介しようと思ったのは、多くの吉村昭作品がKindleで読めるようになって、作品に触れる機会が多くなったためです。

それではおすすめ作品をいくつかご紹介しましょう。


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■ 三陸海岸 大津波
東日本大震災の後、多くの本屋で平積みになっていたのをご覧になった方も多いでしょう。
過去三陸海岸を襲った津波のドキュメンタリーです。足で稼いだ文章は強くてグイグイ引き込まれます。
福島原発の問題で「1000年に一度の大津波」という言い訳が電力会社からされましたが、これを読んで、1000年どころが、明治、大正、昭和、そして今回の大津波と、3,40年に一度は大津波が発生したことを知り非常に驚きました。そして過去津波に襲われた人々は碑石や言い伝えで次世代にその知恵を伝えようとしていたのでした。
今回の震災被害は先祖たちの知恵を無視した結果だと思いました。

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■ 関東大震災
関東大震災というと東京直下型地震の典型だと思っていたのですが、実際の震源は相模湾沖、地震そのものの被害、津波は東京よりも神奈川県の方が甚大で、東京は昼食時だったことにより、火災の被害が非常に大きかったのでした。
この作品で印象に残っているのは、被服工廠で発生した火災旋風の描写です。
真っ赤な空に舞い上がり、避難民を襲う鋭利な刃物と化した鉄板、火にあおられ壁に叩き付けられ熱風のため一瞬に燃え上がる人々。
まるで地獄絵図です。
もうひとつは、震災後の混乱です。発生してからの1か月間はほとんど無政府状態といってもいい。
行政機関、警察、軍が救援に動こうとするが、通信もできない状態で何もできず、そのうちに事態は悪化し、避難民たちの健康状態、モラルも急降下していきます。
平和な日常がどうやって崩れていくのが克明に描かれています。

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■ 羆嵐
北海道の開拓村で発生した三毛別羆事件が題材。
人里離れた開拓村で村民が7人も人食い熊に食い殺され、3人が重傷を負った記録的な獣害事件です。
陸軍から兵隊が投入されても利口な巨大羆は退治されず、最後に地元の有名なマタギに射殺されました。
それまでの過程が刻々と記述され、まさに手に汗握ります。
今年の12月が事件発生からちょうど100年で新聞でも報道されました。

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■ 高熱隧道
これは数ある吉村作品の中でもイチオシの作品です。
舞台は戦前の黒部川上流域。黒部第三発電所の水路トンネル建設に従事する男たちの物語です。
何せ資材を運び込むのも大変な深山幽谷。次々に工夫の落下事故が発生します。やっとのことでトンネル工事に着工しますが、掘り進めるにつれ地熱が高まり最終的には166度・・・
ダイナマイトの誤爆事件が何度も発生し、犠牲者もうなぎ上り。本来ならそんな危険な工事は中止されるのですが、当時は戦時中。
軍需産業を支えるために電力確保は絶対条件でこの難工事は継続されるのです。
この小説で初めて知った言葉は豪雪地帯でまれに発生する「泡雪崩」という現象です。
ご存知ですか?
この自然現象のエネルギーが強烈で、ある吹雪の晩にコンクリート造りの宿舎3,4階部分と中にいた工夫84人が忽然と消滅したのです。
彼らが発見されたのは春が近づいたころ、600メートル以上離れた谷の対岸の山壁に叩きつけられていたのです。コンクリート造りの建物を吹っ飛ばすほどの力は泡雪崩による衝撃波だったといわれています。

黒部峡谷の電源開発を題材にした映画として石原裕次郎主演の「黒部の太陽」が有名です。これは戦後の高度成長期の物語で、高熱隧道の舞台よりもさらに黒部川上流になります。

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2 thoughts on “読書マニア・吉村昭にハマる!・・・羆嵐、高熱隧道、大津波、関東大震災

  1. こんばんは、街歩き隊の上田です。私はラジオドラマが好きで、少しばかりコレクションがあります。その中に、「冬の鷹」と「羆嵐」があります。いずれも30年以上前の作品ですが、ラジオドラマはテレビドラマと違って、いつ聴いても古さを感じません。後者は倉本聰の脚本で、昭和55年度文化庁芸術祭参加作品です。ドラマのほうも傑作だと思います。ちなみに私は、ラジオドラマの収集を通じて、野呂邦暢を知り、大ファンになりました。きっかけをつくった野呂の作品は「諫早菖蒲日記」でした。

    1. おっ、ラジオドラマですか!?
      あまり聞いたことがないので、ちゃんと聞いてみようかな。
      受験勉強しているときにラジオから時折聞こえてきたことがあるのを覚えているくらいで、あまりちゃんときいたことがありませんでした。
      羆嵐なんか、聞いていたら耳が離せないでしょうね!

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